危険?スリングとお雛巻のデメリット8つを解説【窒息死、転落死、先股脱、突然死/まとめ】

スリングとお雛巻きによる先天性股関節脱臼と窒息死に関してのオピニオンです。
以前にスリングとお雛巻に関する愚痴を、書いたのですが、多くの方によんで頂き、非常に人気の記事となってしまったため、医学的観点から論点整理しようと思います。
読み苦しい愚痴の記事を目に止めてくださった皆様、ありがとうございます。
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危険なスリング、おひなまきと先天性股関節脱臼、乳幼児突然死症候群(愚痴)
医学的、科学的に根拠のある新生児、0歳、1歳の寝かしつけ方法は?

長々読むのが面倒な人のために(多分頻度順に)まとめると。

スリングの抱き方(使い方)が悪いと

  1. 転落し、頭部打撲(による脳障害)のリスクが有る
  2. 先天性股関節脱臼のリスクが上がる
  3. 転落死する
  4. 窒息死する
  5. 側弯症のリスクになるかもしれない
  6. 膀胱炎等のリスクが上がる?

お雛巻き(スワドリング、スワドル)の仕方が悪いと

  1. 先天性股関節脱臼のリスクが上がる
  2. 乳幼児突然死症候群のリスクが13倍ほど上がる
以上に関して、私が実際に使用し、知識として持っていること、調べて分かったことをなるべくわかりやすく書いておこうと思います。
これは、私のオピニオンであって、スリングやスワドリングを全否定するものではありません。

2010 年に CPSC(米国消費者製品安全委員会)が、4 ヶ月未満の赤ちゃんにスリングを 使う場合の窒息の危険性について警告情報を発信し、Health Canada(カナダ 保健省)もスリング等を使用する際の転落や窒息事故に関し、注意喚起していますが、強制力はありませんので、利便性と子どもの成長を天秤にかけて親が各自で判断するべきだと思います。
アメリカやカナダで売れなくなってきている中華製の抱っこひも(スリング)やスワドルミー、Swimavaが規制のゆるい日本へ輸出されている気もしますが…(失言!!)
※写真はHealth Canadaからお借りしました。

ベビーフードを使うか使わないか、放射能汚染の影響を気にして食べ物を選ぶか気にしないか、市販のおやつをいつから与えるか、ベビーカーは対面にするのか、スマホの動画を見せるのか、授乳中の飲酒、喫煙…子どもの幼稚園は?お受験させる?…

子育て中は子供の将来と今の生活との兼ね合いの中で、毎日が選択の繰り返しです。
ただ、危険性を知っていて使用するのと、全く知らずに使用するのでは、使用方法に雲泥の差があるのではないかと思いますので、啓蒙活動させて頂きたく思います。

スリングでの抱き方、おひなまきの使い方が悪いと?

転落し、頭部打撲(による脳障害)のリスクが有る

これは、どの抱っこひもでも、使用方法を誤れば起きうる事象です。

ベビービョルンでも、上の二箇所を留め忘れれば転落しますし、エルゴでも立って装着中に転落することもありますし、エルゴの偽物での転落報告も消費者センターには数多く上がっています。
ただ、スリングやトンガの特性上、一枚布で、赤ちゃんを固定している部分が少なく、落下防止装置もついていないので、身をかがめたりする際にバランスを崩しやすく、大人がつまずいたりした際に子どもを巻き添えにするリスクが高くなるだけです。

打ちどころや転落した場所、高さによって、運命が分かれるでしょう。

先天性股関節脱臼のリスクが上がる

先天性股関節脱臼は、先天性とついていますが、うまれつき脱臼している赤ちゃんは多くはありません。もともと股関節が脱臼しやすいような要因(遺伝、性別など)に、環境要因が加わり、先天性股関節脱臼をきたします。
股関節は、臼蓋という骨盤のくぼみの部分と、大腿骨頭という太ももの骨の端で出来ている関節ですが、生後1ヶ月以内の新生児期は、まだ骨が完成しきっておらず、関節を包む袋もゆるい状態です。
今、学会等で言われている先天性股関節脱臼のリスク因子は
  • 秋冬生まれ
  • 女児
  • 家族に先天性股関節脱臼や変形性股関節症の人がいる
  • 逆子のまま分娩
などです。

新生児期の股関節のもっとも自然な位置は開排位という、カエルのように足がM字に左右に開いた形で、勝手にジタバタ動かせるのが理想です。
新生児の股関節は非常にデリケートで足をまっすぐに伸ばす状態を無理に継続させると、股関節脱臼の頻度が上がります。
足が伸びた状態でぎゅうぎゅうに布おむつを巻いていたかつての日本では、文化的習慣による先天性股関節脱臼が多かったですが、指導により(スリング、スワドリングの流行までは)頻度が下がっています。
しかし、今でも、 衣類を着せこむ秋冬生まれの赤ちゃんは、先天性股関節脱臼の発生頻度が高くお雛巻(スワドリング)などでぐるぐる巻きにして覆えば覆うほど、リスクが上がると考えられます。

また、新生児期から首すわり前までのスリング使用では縦抱きが難しく、スリングに入れて横抱きすることとなります。この場合、抱く人の体に接する側の股関節は足が伸びた状態で、横から押さえつけられ、脱臼の頻度を上げる形となります。
もちろん、スリングやスワドリングのみでなく、未熟で成長過程の赤ちゃんの股関節の動きを妨げるもの全てが先天性股関節脱臼のリスク因子となります。
  • レギンス風のキツめのタイツ
  • 外出用のおくるみ
  • 小さめのオムツ(特に股関節部を締め付けるテープ型)
  • 重い布団
  • 厚着
  • いつも同じ向きでの横抱き
  • 向き癖の放置
思い当たる点はないでしょうか。もともとリスク因子に当てはまらない場合はあまり関係ないかもしれませんが、リスク因子がある場合は少しのことでも注意してあげて欲しいです。

窒息死する

赤ちゃんは気管が細く、首が過度に前に曲がり、あごと胸がくっつくような形になると簡単に、短時間で窒息します。スリングの種類や抱き方によっては、赤ちゃんがすっぽりと布に埋もれ、表情を確認できない形になり、異変に気づけません。
実際にスリング内で窒息死した赤ちゃんのお母さんは家についてスリングから出すまで「眠っていると思っていた」 と証言しています(2010年小児科学会報告より)。
スリングだけでなく、一般的な向かい合わせの抱っこひもを使用し、その上からコートを羽織るなど、抱いている側の胸部分と赤ちゃんの顔があたり、窒息する事例もあります。
ベビービョルンの抱っこひもでも、首部分の調節ベルトの締めすぎに注意してください。
赤ちゃんは日々成長し、様々なことが一日単位で出来るように変わってきます。お雛巻きで寝かしつけたままにしていると、力の付いてきた赤ちゃんが自分で布を外してはずみで顔にかかってしまうことや、寝返りしようとして寝具で窒息することもあります。これは、寝具全般に言えることですが、手足をきつく覆われていると、苦しくなった時に寝具をはねのけたり身体のむきを変えることが出来ません。お気をつけください。

側弯症のリスクになるかもしれない

一部のネット販売業者が、スリングは無分離すべり症の予防になると根拠もなく記載していますが、誤訳です。無分離すべり症の原因は解明されていませんので、予防方法も現段階では分かっていません。分離すべり症は思春期のスポーツにより引き起こされる物ですので、抱っこひもは無関係です。
背中を丸めると安心してよく眠る、と、一部で言われていますが、背骨の成長に適しているのは沈み込まない硬めマットレスです。未熟な背骨に無理な力をかけることは、側弯症につながるかもしれません。
 
スリングだけでなく、自分でお座りできるようになる前に使用するバンボやカリブのような補助椅子、バウンサーの長時間使用でも同様のリスクがあるかもしれません。

膀胱炎等のリスクが上がる?

一部ネットで言われていることですが、私自身泌尿器科ではないので、真偽は不明です。
尿道スリング手術を勘違いして広まったのではないかと思っています。
スリングでの横抱きで背中が丸まると、赤ちゃんのお腹は圧迫されるので、便秘にはなるかもしれません。
逆に、スリングに入れてから便秘が治ったのだとしたら、お腹が圧迫されて便が出たのか、抱っこで暖められて温罨法にようになったのでしょう。スリングでなくても対処可能です。

乳幼児突然死症候群のリスクが13倍上がる


乳幼児突然死症候群は、睡眠中などに赤ちゃん~3歳位までの子が何の前触れもなく死んでしまうという恐ろしい病気ですが、うつぶせ寝、枕の使用、親の喫煙などの他に、温めすぎ顔周りの二酸化炭素濃度の上昇が原因とされています。
※小児科学の学会誌pediatricsに掲載の論文では、おくるみ(スワドリング、スワドル)時の乳幼児突然死症候群の危険率は腹臥位(うつぶせ)で13倍、側臥位(横向き寝)で3倍、背臥位(仰向け寝)で2倍でした。
つまり、スワドルミーなどに入れて仰向けに寝かせるだけで、お布団やタオルケットで手足が自由な赤ちゃんと比べて2倍死にやすいということです。
うつぶせ寝で顔周りの空気が入れ替わらないと、自分の吐いた息で低酸素(二酸化炭素濃度が上がる)になり死に至るという説が主流でしたが、温めすぎという説も有力で、どちらも一因になっているのではないかと思います。
赤ちゃんの体温は大人よりももともと高めです。なので、赤ちゃんの快適な温度は大人が思っているよりも、低いことが多いです。
体温が高くなると、動物は汗をかいて、体温を下げようとします。しかし、手足を含む全身をスワドリングで包まれた乳幼児は、汗をかいて手や足から熱を逃がすことが出来ません

体温を下げたいのに、熱を逃がすことが出来なければ、熱を作らないようにするしかありません。
筋肉がたくさん動き、心臓がちから強く動けば、身体で熱が作られますから、その逆で、筋肉を緩めて、呼吸を少なく浅くして、ぐったりと眠ることになります。
呼吸が浅く少なくなると、身体は低酸素になり、ゆっくりと死に近づいていきます。
スワドリングでぐっすり眠っていると思っている赤ちゃんは、実際には永久の眠りに近づいているだけかもしれません。
突然死を避けるために、手か足のどちらかは覆わずに衣服の外に出して下さい
その手足はあかちゃんの命綱です。

赤ちゃんがすっぽり布にはまり込む状態でスリングを使用すると、低酸素、高体温ともになりやすいので厚手のスリングの場合は特に注意してください。

事故の責任は誰にある?子どもには代わりが居ない!!

スリング、お雛巻(スワドリング)商品は、販売者が個人輸入やハンドメイド、大量受注し、ネット上で販売しています。
本来、商品というのはPL法に基づき製造者がその危険性を表示する義務がありますが、輸入品やハンドメイドだと、責任がはっきりしません。
現に、溺死報告のあるSwimavaはいまだに販売されて溺水報告も続いています。

スリングであれ、Swimavaであれ、スワドルミーであれ、一つの商品を名指しして、その危険性を訴えることは営業妨害という一面を持ち合わせていますので、こんにゃくゼリーのように(食べ方を守らずにであれ)多数の死亡者が出るまで行政は動かないでしょう。
  • 溺水の可能性があるものだと理解して、なるべく目を離さないようにスイマーバを使用する
  • ピーナッツを誤嚥すると重症な肺炎になるということを理解した上で、慎重にピーナッツを与える
  • ポップコーンや枝豆で窒息死する症例があると知っていて、電車内など急に揺れる場所では与えないようにする… 
  • はちみつにはボツリヌス菌が混入している恐れがあるので離乳食には使わない
  • 遊具に引っかかって首吊り事故につながるので、フード付きの衣類は購入しない
リスクを知らないために起きる事故は、保護者が知っていれば避けれたものも多くありません。
事故に合われた方にお悔やみ申し上げるとともに、これ以上、無知による被害が出ないことを強く願っています。

でも、これがないと生活できないんです?!

ネットで、よく見かける、「スリングがないと育児ができない」「おひなまきが出来なくて、寝てくれなくなったら気が狂ってしまいそう」「こんなに便利で役立つのになぜ反対するの」「うちは大丈夫」「この子はこれが好きなの」という意見。
それは、それで、良いんじゃないでしょうか、自己責任で。
寝返りが可能な時期(生後6ヶ月)以降では、お雛巻き使用時の乳幼児突然死の発生率は不使用時の2.5倍と跳ね上がります。でも、泣き止まなくて虐待しそうならもっと死亡率は高いでしょうし。
今のところ、検診で股関節の開きが悪いと引っかかった親で、「スリングが無いと生活できないのでやめません」と言い放った親には幸いまだ出会ったことがありません。
これがないと生活できない?育児ができない?本当ですか?